修理前
お客様はリピーター様で、この時計はご購入から5年になりますが、ネット申込にて定期オーバーホール集荷見積りをご依頼いただきました。この時計はご購入後初めてのオーバーホールです。
修理中
当社の技術者が裏蓋を開封して内部を拝見したところ、内部のムーブメントには油切れ以外の問題はありませんでしたが、本体ケースと裏蓋の間に汚れが溜まって腐食が発生していました。この腐食は、洗浄時に綺麗に除去しますが、そのままですと腐食がとれた分だけ隙間が空いて防水不良となります。今回はムーブメントのオーバーホールと共に、接着剤を腐食箇所に盛って防水性を確保する「防水機能回復作業(接着補強)」を行いました。ビューマチックはこのような裏蓋に腐食が発生するケースが多く、注意が必要です。
修理後
オーバーホールは無事完了し、防水機能回復作業により3気圧防水も確保できました。もしメーカー修理ですとミドルケースと裏蓋交換になっていたもしれませんね。またこれで元気よくご使用いただけますが、オーバーホールだけでなく外装パーツの洗浄も必要ですので、定期的なメンテナンスのご利用をお勧めいたします。
今回交換したパーツです。
オーバーホールと共に、裏蓋パッキンが交換になりました。他に交換パーツが出ませんでしたので、比較的安価にオーバーホールが完了しました。
※今回の修理を通じての総括
・故障が起こった原因を想定した、今後のメンテナンスのアドバイス
弊社では、オーバーホールは3~4年の間隔で行うことを推奨しています。それ以上の年数になりますと、外装パーツが汚れで腐食したり、機械油が切れた状態で稼働し続けますのでパーツの摩耗が進みます。早め早めのメンテナンスをお勧めいたします。
・修理が大変になった理由など
今回、内装パーツはパッキン交換のみで済みましたが、長期間メンテナンスをしないと交換パーツが多くなり修理費用が高額になる場合があります。
・お客様の喜んでいただいたポイント
修理費用が低く抑えられましたので、お客様には納品時に大変お喜びいただけました。
・オーバーホールの流れの中で、作業の特色や工夫点など
お品物は接着補強により3気圧防水は効いておりますが、経年によりケース、裏蓋に腐食があり、接着補強はいたしましたが念のため非防水としてご使用されることをお勧めいたします。オーバーホールは、ムーブメントの分解掃除の頻度のみをお考えになる場合が多いですが、ブレスレットや本体ケース、裏蓋やリューズの汚れを定期的に除去することも大事な作業となります。経年で溜まった汚れから、ステンレスでもサビや腐食が発生します。超音波洗浄やサビ落としで腐食やサビは除去しますが、除去した部分は金属に隙間ができますので、結果的に防水性が弱まります。このような観点からも、早め早めのメンテナンスをお勧めいたします。
オーバーホール後のご使用上の注意点をお知らせいたします。
1:防水について
時計の外装は、経年劣化や汗・汚れによる腐食やサビ等によって、新品時よりも防水性が低下しております。また、今回洗浄して汚れがとれたリューズやケースの隙間等から水分が侵入し、くもりの原因となる可能性がありますので、水回りには注意してご使用下さい。もし水分がかかった場合は、速やかに拭き取りされることをお勧めいたします。また、お風呂は厳禁です。温泉成分や石鹸が付着し、パッキンの劣化やケースの腐食が起こる危険性があります。お湯で時計の温度が上昇しますと、ムーブメントに注してある機械油が流れたり、劣化しますのでご注意下さい。
2:磁気について
時計は磁気を帯びてしまうと進みや遅れ、止まりが発生する場合があります。身の回りには様々な磁気を発する物があふれていますので、ご注意下さい。
例:テレビ、パソコン、スマートフォン、鞄の磁石、車や家の鍵、磁気ブレスレットなど。磁気を帯びているかどうかは、コンパスを近づけると容易にわかります。
3:持続時間(パワーリザーブ)について
停止状態からご使用を開始される際には、手巻き補助(40~50巻程度)を行っていただけますと、適切な持続時間が発揮できます。最初に手巻き補助をしないと、夜外して翌朝には止まっているようなケースも見受けられますので、そのような場合はいちどお試し下さい。
4:次回オーバーホール時期について
機械油は約3年で劣化を始めるといわれております。ご使用頻度にかかわらず、3~4年に一度のオーバーホールをお勧めいたします。