「メーカー基準」の自動巻時計の巻上げ検査|時計のオーバーホール・修理事例/料金・費用

時計修理コラム

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2025.10.04

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ウォッチ・ホスピタルが実践する「メーカー基準」の自動巻時計の巻上げ検査:高級時計の心臓を蘇らせる精密なプロセス

ウォッチ・ホスピタルが実践する「メーカー基準」の自動巻時計の巻上げ検査:高級時計の心臓を蘇らせる精密なプロセス

高級機械式時計の心臓部であるムーブメント。中でもスイス製高級時計の自動巻機構は、着用者の動きをエネルギーに変える重要なシステムです。

オーバーホールや再調整を完了したタイムピースが、新品同様の性能を取り戻しているかを証明するため、ウォッチ・ホスピタルではメーカーの定める厳しい基準に則った自動巻上げ検査を実施します。これは単なる動作確認ではなく、時計の真の「健康状態」を診断する精密なプロセスです。

 

ステップ1:業務用ワインディングマシンによる「動作シミュレーション」

メーカー基準の自動巻上げ検査で最初に行われるのが、専用の業務用ワインディングマシンを用いたテストです。

目的: 日常的な着用、つまり腕の動きによるローターの回転を正確にシミュレーションし、自動巻機構が効率的にゼンマイを巻き上げているかを確認します。

方法: 時計のキャリバー(ムーブメントの型番)ごとに定められた「回転方向」と「回転数」、そして「作動時間」を設定し、機械的に巻き上げを行います。自動巻機構は両方向巻き上げのものが多いですが、その効率を最大限に引き出すためのテスト条件が適用されます。

検査ポイント: 規定の作動時間で、どれだけのゼンマイの巻き上げ量が確保できたか(蓄積されたエネルギー量)が最も重要です。

 

ステップ2:規定をクリアしたかを測る「パワーリザーブ(持続時間)テスト」

巻き上げテストで十分なエネルギーが蓄積された後、時計をワインディングマシンから外し、その真の持続力を測定します。

目的: フル巻上げの状態から、時計が完全に停止するまでの時間を計測し、弊社の定めるパワーリザーブ時間(持続時間)の基準を満たしているかを検証します。

検査の厳格性: 現行モデルの多くは40~70時間前後のパワーリザーブを持っています。ムーブメントの摩耗や注油の不備があると、この時間が短縮されます。ウォッチ・ホスピタルでは、規定の時間をクリアしたことを厳しく確認し、自動巻機構が最高の効率で機能していることを証明します。

 

ステップ3:あらゆる姿勢での「歩度(精度)テスト」

巻き上げ量が十分であっても、時計の精度が不安定では意味がありません。最終的な仕上げとして、タイムグラファーを用いた歩度測定が行われます。

目的: 様々な姿勢(文字盤上、文字盤下、垂直など)において、時計の「日差(1日に進む、または遅れる秒数)」が弊社の定める基準内にあるかを細かくチェックします。

自動巻との関連性: ゼンマイの巻き上げ量が少なくなると、(パワーリザーブが終盤になると)、精度に遅れが発生します。その場合は30~40巻程度の手巻きの補助をしていただくと、パワーリザーブと精度が復活します。

 

ステップ4:操作感と異音の「五感によるチェック」

高度な機械による検査に加え、熟練の技術者による感覚的なチェックも欠かせません。

手巻き感触の確認: リューズを操作して手巻きを行った際に、「滑らかさ」「適度な抵抗感」があるかを確認します。巻き上げの際に異音や引っ掛かりがある場合は、巻き上げ機構やローター周辺の部品に不具合が残っている可能性があります。

ローターの異音チェック: 時計を静かに揺らし、ローターがスムーズかつ静かに回転するか、異常な「ガラガラ」といったノイズがないかを確認します。これは、ローター軸の摩耗や、自動巻モジュールの部品の不備を検出するために重要です。

ウォッチ・ホスピタルでの巻き上げ検査は、これらの多岐にわたる工程を経て、「この時計は再び、正確さと信頼性を持って時を刻む」という確証をお客様にお届けするための、最後の、そして最も重要な砦となります。

 

大切な時計を長く愛用していただくために、ぜひ定期的なメンテナンスをご検討ください。何か気になる点があれば、いつでもお気軽にご相談ください。

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